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以下の内容とはゼンゼンカンケーございません。
(どなたの作品か不明。)




(1)

小噺三題




(一) 怒るはず


 八つぁんが長屋のご隠居さんちへ息せき切って駆け込んできました。

  チョ、チョ、ちょっと聞いておくんなせい、ご隠居さん!

おやまあ、どうしたってんだい? そんなに泡くって。

 どうもこうもあるもんケイ! 人の噂を真にうけたばっかりに
心の臓が破裂するほどビックリこいちまったぞい
な。

マアまあ水でも飲んで、落ち着いてわけを話してごらんよ。

ちかごろ長屋へ越してきた御仁は
仏様ミテーな優しいお方と聞いていたが、


とんでもねえ!

鬼より怖いくらいだぜ、まったく

バカをお言いじゃないよ八つぁん。あたしゃヨオク存じ上げておるが、
"みたい"どころか仏様も真っ青なソレハそれはデキタおかたじゃ。
しかし、なんでまたそんなことをいうんだい?


今日は彼岸なもんで
今しがたカカアの手作りのおはぎを届けに行ったんだが

そこでキャツメにちょいとしたイタズラをしてみたんでサ。

すると
烈火のごとく怒り狂いダシャァがったってわけなんでさあ。

あのお人に限ってマサカ! 信じがたい話じゃ。
して、"ちょいとしたいたずら"って、いったい何をしたんだい?


ナニネ、手枕でぐっすり眠ってやがったもんで
揺り起こしてみたんだがどうしても起きてくれねえのよ。
それで仏様なら怒ることもアルメイと
火鉢にあった豆粒ほどの火種を火箸でつかんで


耳の中に入れた



30年以上昔に読んだ「江戸小噺大全」にあった話。 
出版社や編者は今となっては不明。
 






(二) 負けたア〜〜ッ!

 
ケチ同士が自慢しあっておりました。
梅干を睨んで飯を食うとか、うなぎやの前で匂いを嗅ぎ
それが消えないうちに飛んで帰り飯をかき込むとか。・・・

そのうち話が扇子に及び、一人が
ホコラシゲにいわく、


わしゃ20年もこの扇子を持ち歩いておるが、見てのとおり新品同様。

暑い時でも扇ぐのをぐっとこらえておるからじゃ。



それを聞いてもう一人がフフンとせせら笑い、

暑いときにも使わんとはのう、ナントしみったれた御仁じゃ。
ワシなんか30年使い続けとるが、あんた以上に新しかろう。



えっ、30年も使い続けて痛まんとは、どないなさってるんじゃ?


教えてあげてもよいが、ケシテ口外なさるなよ


ここで相手の耳元に口をよせ声をひそめて、

それはね、開いた扇子を顔の前にもってきて、


扇子を振らずに


桂米朝の落語から。 






(三) 浮世根問(うきよねどい)
2,009/4/11 追加

分らないことがあれば 誰彼かまわず根ほり葉ほり訊ねまくるという、
いささか人迷惑な性分の八公が、
物知りと評判で、人に教えることが大好きで、
知らないということが言えないタチの ご隠居さんを訪ねました。
(相性があいそうなのに、どーゆーわけか これが初対面。)


お初にお眼にかかりやす。なんでもご存知だそうで・・・
ちぃとばかり お訊ねしてぇことが ごぜえやして。

おぉ、確か八っつぁんとかいったな。
おまえさんの噂だけは よおくきいておるんじゃが
近所に住んでいながら、初めてとは意外じゃな。

さあさあ遠慮なく 何なりと訊いておくれ。

そんじゃまあ、さっそくお言葉に甘えやすが、
西の方にどんどん行けば どこになるんでやんすか?


京、大阪、もっと遠くは博多になるな。

それくらいは なんとか知ってまさあ。
その、博多をもっと西に行ったら どこにでるのかなあ?


もう、そこには大海原があるばかりじゃ。

海を越えて まだもっと向こうに行ったら どこになりやす?

海の向こうは 唐になるな。

おっと訊かれる前にいっておくが、もっと西に行けば天竺に至る。

では その天竺をどんどん先に行けば、どうなるんでごぜえやす?


その先は、もう何もないところじゃよ。

その何もないところを かまわず どんどん西に行けば、どこにでてしまうのかな?

ムリにでも、ずううううう
うううううううううううっつと行けば、西方十万億土に至るな。

じゃあ その十万億土とやらを もっとまだ向こうに行けば?


う〜む、もう、もうもうとして 何もわからないところじゃよ。

その、もうもう としたところを もっと西に行ったら どうなっちゃうのかな?

う〜〜んう〜〜ん、もう、もうもうもうもうもうもう としたところへ出てしまうな


その、もうもうもうもうもうもう としたところを まだまだもっともっとどんどん行けば?

もっともっともっと、もうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもう
 

「知らない」「分からない」の一言がいえないばっかりに、
苦し紛れの受け答えをするしかないご隠居さん。




おまけに、ここで喘息の発作をおこしてしまい、
喘ぎあえぎ 大きな声を絞りだして曰く、

さすがのご隠居さん、どうやらギブアップなすったようで。



吉田夏彦著・「論理と哲学の世界」 より引用。
(原文をユガメている個所多々あり。)

浮世根問の
根問(ねどい)とは、根ほり葉ほり問いただすこと。
(つい先日、ネットで意味を知ったばかり。)






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