しりいず

あ	【３】	あ
	▼ 死してもなお命は永遠なれ
	夜空にいっぱいまたたくお星さま。惑星を除けば一番近い星でも、何と光 の速さをもってしてなお４年ほどもかかるということでおまス。１秒間に地 球を７回り半もしてしまうというメチャクチャ物凄いスピードで４年でござ るよ。それが一番近い星とゆうんやサカイもうたまげてしまいますわなあ。 宇宙の如何に広大なるかを思い知らされますワナア。 　ここで七夕の前夜、お姉様がその距離１６光年という彦星を眺めたといた しましょう。その光は１６年前に彦星を出発していま姉サマの目に届いてい るわけですヤンカ。 　「マアなんて奇麗な彦星さま。チョットアンタ、アスの夜の年に一度の織 姫との逢瀬がタノシミダワネ。ワクワクシテンジャナイ。イヤラシイコトカ ンガエテンデショ、チャントオミトオシナンダカラ。コノドスケベメガ。」 　と、姉御さまが天に向かってロマンティックに語りかけたまさにその瞬間 （１６年前ではありませぬヨ）、彦星が超新星爆発を引き起こし雲散霧消、 悲劇的最後を遂げた仮定してみましょうヨ。つまり宇宙から消滅──死んで しまったと仮に想定してミマセンカ。織姫の悲嘆やイカニはこの際問わず、 問題オバ彦星を眺めている姉サマにもってきたいと思うのであります。 　「なんでそんなことスンノヨ。アタシカンケイないと思うケド。」 　なんてヌカさんとマア聞きヤガッてくださいマセ。 　サテお姉様がいま眺めてラッシャル彦星は１６年前の姿ですよネ。一方彦 星が非業の死を遂げたのが今現在この瞬間ですよネ。となるとどういうこと になりマッシャロかねお姉ちゃん。彦星は死ンジャッタンダヨ。今この瞬間 「彦星は光を放っていない」のダヨ。なのにお姉様におかれまして「輝いて 見えている」ということは！・・・ 　そう、ソウナンですヨ。彦星は立派に生きてイルじゃあオマヘンカ。へん ですヨネエ。死んだものが生きている！（生きて見えている）。ソンナバカナ！ （お姉様が彦星の死を知るのは１６年後であることくらい子供にでもワカッ チャイますヨネ。） 　お姉様が仮に彦星から百光年の星の住人だとイタしましょう。とすれば、 彦星が死んだのを知るのは百年後でありますから、アト百年間彦星は「生き て輝いている」計算になりマッシャロ。１万光年の距離だと１万年、１億光 年だと１億年、１兆光年だと１兆年間（数百億年といわれる宇宙の年齢より はるかに長い。）ものあいだ
	このような考えをドンドン延長してマイレバ、究極的には（詠嘆的にユウ のではナク）「命は永遠ナリ」と申しても決して間違いではないのではない かとボクは思うてオルンでごわすがドナイナモンでっしゃろ、オネエサン。 　ここでは「星の死」を取り上げましたが、「人の死」も理屈はマッタク同 じでことであるのはユウまでもありませんヨネ。それどころかこの「理論」 を適用いたしマスレバ、バイ菌から虫、植物、動物に至るまで、オヨソ命あ るものすべて
	ということになるのでゴザイマス
	なお、上では遠距離について考察いたしましたが、近距離、たとえ目前の 人についても理屈はマッタク同じなのでありますヨ。つまり目前の人の死も 「未来」において知るまでのアイダは「生きている」のでございマス。 　「ナンデ目前の人の死が未来、いえ過去ナノヨ？」とのご疑念はもっとも でゴザリマスル。ここらあたりの理屈の説明は少々やっかいなんでオマスが 逃げずに聞いてくれるならご説明いたしてもヨロシュおますけど・・・。 　エッ「ニゲズニキクワヨ。」デスト。 　ものの本によりますレバ、何とかいう素粒子の寿命はソレハそれは短いら しいデッセ。あのモノスゴ速い光がタッタ１ミリ進む時間しか生きておれな い，命が尽きてしまうということでございます。 　そのハカナイはかない素粒子チャンの一生を、たとえば人生７０年の人間 の時間スケールまで拡大してみたとしましょうヨ。すると、１メートル、つ まり１０００ミリ離れたところにいる人は,
	７０（年）×１０００（ミリ）＝７万(光年)
	も遠方にオルことになってしまう理屈になるのおわかりになるヤロカ。エッ、 「チョットわかりにくいワネ。」ですと。ソリャそうでしょうよ。言ってる 我輩も少し混乱してしまうくらいですカラネ。 　要するに光の速度が有限であるということは、たとえ目前の出来事であっ ても、それは「過去」なのであります。スケールを変えればトオイ遠い過去 ともいえるのでアリマス。 　（現代最高レベルの数学者であり物理学者の一人ロジャー・ペンローズと いうお方がユウテハッタけど、「プランク時間」とかいって物理的に意味の ある時間の最小スケールからみれば、「人生は宇宙の歴史ほども長い」とい うことでオマス。） 　ここでちょっとオモロイ話を。 　もし今（２００１年７月のことですヨ）４０光年遠くの星に我輩がいて、 超高性能望遠鏡で地球を覗きお姉様を発見し、そのアマリの麗しさにウット リみとれたといたしまショウ。その拙者の目に写ったお姉様は何と白雪姫で あらせられた１４歳の少女のお姿だったのでアリマス。なぜだかわかります ヨネ。５４歳マイナス４０（光）年イコール１４歳でありますワナア。今現 在地球上の我輩でも、超光速宇宙船に乗って１４歳の姉御から放たれた光に 追いつければ、そのときのお姉様のお姿を拝める理屈ですヤンケ。その気に なれば赤ちゃん時代のネーサンにお会いすることもできるってワケサ。 　この原理を応用いたしマスレバ、楊貴妃やクレオパトラはもちろんのコト、 その気になればマンモスや恐竜の姿を目にすることもできるわけであります が、デモ何とも残念ながら、あいんしゅたいんの相対性原理により光速が宇 宙最高速度ということになっとりますモンヤデ、それはゼッタイかなわぬ願 いなのでござりますルヨ。
	次号に続く

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