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ご注意!

以下の文を書いたのは5,6年前のことでありますが、
今読み返してみるとナンダカ若い頃書いたような調子になっておりますれば、
多感だった20代前半に書いたものとしてお読みいただきたく願う次第でございます。
なお こちら にもこの文章を手直ししたものを掲載しておりますれば
併せてお読みいただければ幸いであります。





 ベートーヴェンは私の心を癒してくれる最大の芸術家です。とりわけ
「第五・運命」はズタズタに引き裂かれた心を一時的であれ修復してく
れるのみならず、神に近づけるほど高い精神へと昇華させてくれます。
若い頃、自分ほど運命を聴いたヤツはいないのではと思うくらい繰り返
し聴き、そのたび感動にうち震え涙したものでした。

 私はものすごくひねくれ者で、万人が認める評価というものには反発
を感ずるのが常ですが、この運命の「世紀の名曲」という世評だけには
同調せざるを得ません。

 しかし一方、「世紀の名曲」への認識の仕方には世評と大きなズレを
感じています。というのは、これは本来「世紀の名曲」(万人に愛され
る)と評されるべき性質の音楽ではないと思っているからです。
 どういうことかと言いますと、運命は(感性豊かな)人から幸福や平
穏を奪い去り、底知れぬ心の暗闇地獄へ引きずり込む恐ろしい力を持っ
た音楽だからです。いいかえれば、底知れぬ絶望の暗闇地獄に堕ちこん
でいる者でなければ本当の意味で感動できるはずがないと思うのです。

 私の言っていることをもっと理解してもらうため二つのエピソードを
紹介しましょう。
 まず同時代のゲーテにまつわる逸話です。

 メンデルスゾーンが子供のころゲーテおじさんに運命の第一楽章をピ
アノで聴かせたところ、ひどく感動した様子だったので感想を求めると
なぜかうろたえて
「くだらん音楽だ!」と怒気をこめて頭ごなしに否定し去
ったそうです。

 私にはゲーテのこの時の心理が手に取るようによくわかる気がします
ゲーテのような貴族的で洗練された優れて高貴かつ健全な「肯定的人生
観」の持ち主には、運命のような音楽を受け入れてしまうと自己の全否
定につながりかねないから上のような反応したのです。これは絶対間違
いなし。

もう一つは時代が少し下って

「こういう音楽は聴くべきではない。」

というまさにそのものズバリのベルリオーズの言葉です。

運命(特に第一楽章)はそういう音楽だと思っております。だから私
にはこの曲がこれほど人気があるということがほとんど信じ難い現象。
万人が絶望の人なんてあり得ないのだから。

 特に第二楽章半ばの短い旋律は! 女神の慟哭を想わせるその崇高な
余りにも崇高な旋律には、

 神について書かれた世界中の宗教書を集め山と積んでも
 それには遠く及ばない。

女神様の慟哭を聴く

とさえ思っています。この旋律だけでも「運命」があらゆる芸術の最
高峰にある作品だと確信しておるのであります。



 こういうわけで、第五に関しては世界中の誰よりも理解している,
などという不遜な自信を抱いておる次第です。



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「音楽・芸術家」としてはベートーヴェンに最大の共感を覚えているの
ですが、「人間」として最も共感するのはシューベルトです。極貧の生
涯を送ったことと、「メチャクチャ生きることがヘタクソだった」点に
スゴク共感するのです。ワタクシ「日本一の貧乏人」に何とそっくりな
こと! その芸術性を問わなければ。

 ベートーヴェンは伝記によると、周囲にはなはだ煙たがられる人間だ
ったようです。裁判沙汰を起こすなど金には余りキレイではなかったみ
たいですし、気分屋で機嫌が悪いとあたりかまわず怒鳴り散らしたりし
ていたそうです。

 対してシューベルトは社会的には何ともひ弱な人間だったようです。
「金銭交渉」「かけひき」がまったくできない不器用な彼(何とこのワ
タクシメと似た性分!)は、どんな素晴らしい曲を作ってもいつも出版
屋のいいなりにたたかれ雀の涙ほどの作曲料しかもらえなかったという
ことです。またいよいよ金に行きづまり自分の命のようなバイオリンを
質屋へ持ち込んだり、スカンピンになってしまい、欲しくて欲しくてた
まらない五線譜も買えない時もあったなどという逸話はよく知られてい
ることです。

 「未完成」のような、たまらなく美しく清らかな音楽を作ったシュー
ベルトのこの悲惨さを思うと涙が出そうです。(現象的には)この惨め
で哀れな日本一の貧乏人メと二重写しになって、こんなシューベルトに
同化し溶けこんでしまうほど深く深く共感するのです。

 ところで、未完成・第二楽章にはこの世のものとは思えないほど神秘
的で美しい旋律がありますが、これを聴くたび深い感慨にとらわれます
それは
忘れようとて忘れられない遠い過去の一人の女性の思い出です。別ペー
ジに
霧の中の聖女 と題した曲(第二楽章のその旋律をアレンジしたもの)
をアップしておりますが、彼女のイメージはまさに
霧の中の聖女でした

未完成は彼女の姿、内面を余すところなく描いている

と何十年経った今でも思い込んでいる次第です。





 以上、ワタクシ・日本一の貧乏人の心の深層をご理解願うべく、ベー
トーヴェンとシューベルトについて所見を申し述べさせていただきまし
た。 健全なる精神の持ち主なる皆様におかれましては、こういう感覚
病的に映ったことでありましょう。





おわり



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